温度計の校正方法
温度計の校正とは、校正対象の温度計で測定した際に表示される温度と、精度が十分に高いとみなされている標準温度計で表示される温度の差異を確認することで、校正対象の温度計で測定し得られた温度 (ずれがあるもの) から実際の温度を推定する関係式 (校正式) を導き出す作業を意味します。
その関係式を用いて、測定した値を修正することを「補正」や「調整」と呼び、厳密には校正とは分けて考えます。
つまり、温度計の校正には3ステップあり、分かりやすく言うと下記のイメージです。
校正対象の温度計と、精度の高い標準温度計で同じ対象を測る
校正対象と標準温度計の値の対応関係を把握する(対応表にする等)
相関関係を校正式として導き出す
この校正を行うことで、対象の温度計を用いて計測された温度の精度が保たれることになります。一見難しそうに見えますが、温度計用の校正器を使うと比較的容易に行うことができます。
温度計の校正はどんな時に必要か?
温度計の購入時
工業用など、高い精度を求められる温度計を導入する際は、校正証明書付きで温度計を購入することになります。プローブ着脱式の温度計であれば、温度計本体ではなくプローブに校正証明書が付属する場合もあります。
校正証明書が付属していない製品は、購入時にメーカーにご依頼いただくとスムーズです。(Testoの校正サービスについて見る)
温度計を使用する前
温度計を使用する前に校正を行い、温度計の使用期間中にどのような状態であったかを確認します。
定期的な校正が必要
温度計には熱電対・サーミスタのような素子や、赤外線受光素子などの電子部品が使われています。
これらの電子部品・機械部品はどうしても時間経過や使用により性能が変化(劣化)します。そのため温度計を使用するアプリケーションによって期間や条件を設定し、定期的に校正を行う必要があります。
劣化や故障が疑われるとき
校正を行うことで、温度計の状態を把握することが可能になります。明らかに異常と思われる値が表示されていたり、不安定で測定温度に偏りやばらつきが大きいような状態について、客観的な判断が可能になります。
それらは修理や廃棄・買替えを行うことで温度測定の精度を保つことができます。故障の可能性が高ければ校正ではなく診断を行うことでコストを下げることも可能です。
温度計のメーカーや外部の校正機関に費用を払って校正を委託する外部校正と、ご自身で校正する内部校正があります。どちらもメリットとデメリットがありますので、自社にとって総合的にメリットがある方法をお選びください。
外部校正のメリット/デメリット
メリット
校正器が不要
校正を行う手間も不要
精度が担保された機器による校正が保証される
デメリット
都度委託する費用が掛かる (個数が多ければ費用も増える)
梱包/発送の手間がある
返却までの期間が掛かるため予備の温度計が相応数必要
内部校正のメリット/デメリット
メリット
都度委託する費用が不要
梱包/発送の手間がない
すぐに校正でき、予備の温度計の個数が少なくて済む
気になるときに気軽に/頻回に校正できる
デメリット
温度計の種類に応じた校正器の購入が必要
校正を行う作業が必要
校正器自体の校正は外部校正が必要
外部校正 | 内部校正 | |
初期費用 | なし | 校正器購入費 |
継続費用 (実費) | 個数が増えるとかけ算式に増える | 定期的に校正器の校正やメンテナンスが必要 |
社内工数 | 回収・梱包・記録管理・発送・受取工数 | 校正工数 |
校正に要する期間 | 日数を要する | 分単位 |
予備の温度計 | 校正期間の代替として多く必要 | 故障に備える程度で少なくて済む |
内部校正を行うことを検討する場合、どのように温度計の校正を行えば良いのでしょうか。その手順や方法について温度計の種類別に解説します。
(1)中心温度計・浸漬温度計・熱電対の校正
特定温度ポイントにコントロールしたシリコンオイルの中に温度計を突き刺して測定します。校正対象の中心温度計と、標準温度計を同時に用いて値を比較します。
正確な校正のためには、複数の温度による測定を行い相関関係を確認する必要があります。ただし飲食店の現場で用いる中心温度計など、工業グレードの温度計精度管理が不要な場合は、簡易に氷水に突き刺して0℃と表示されるかチェックするようなことも行われています。
コスト・求める精度・リスクを考えて校正の方式を考えましょう。
(2)気体温度計の校正
気体は、温度が均一状態にコントロールされた均熱ブロックの中に、校正対象の気体温度計と標準温度計、そして温度のフィードバック機構のための制御センサの3本を挿入して測定します。
同時に校正したい温度計の本数が多い場合は複数本を差し込むのが効率的です。
(3)表面温度計の校正
3つのボアホールで表面温度を測定します。外部リファレンスセンサーに切り替えることで、表面上の最適な温度基準点を得ることが可能です。
放射温度計の校正は黒体炉という光を吸収する装置を使用します。黒体炉の中に向けて放射温度計やサーモグラフィを向け測定し、炉の中に設置された標準温度計との温度を比較し校正します。
校正したい温度計の種類ごとに校正器を用意すると、導入コストがかさみ、さらに個数分の維持管理の手間を要してしまいます。また、装置毎の取り扱いを習得する必要があり、設備管理者の方やユーザーの負担になります。そのため、ここでご紹介した代表的な4種類全ての温度計に、1台で対応可能な校正器をおすすめいたします。汎用性のある校正器のため特定メーカーの製品に限定せず、校正にご利用いただけます。
それが、Testo Thermator Ⅱです。
Testo ThermatorⅡは前モデルからリニューアルし、使いやすいタッチパネルを搭載。高い操作性を誇ります。
インサートを入れ替えるだけで簡単に4種温度計の校正が可能!
Testo ThermatorⅡなら、4種類のインサートを差し替えるだけで中心温度計・浸漬温度計・熱電対、気体温度計、表面温度計、放射温度計・サーモグラフィ全ての校正が可能です。持ち運びしやすいコンパクト・省スペースな筐体、どのメーカーの温度計であっても使用可能な汎用性の高さ、ドイツの専門メーカーによる信頼性の高さから自信を持っておすすめできる製品です。現在お使いの温度計で使用できるかなど、お気軽にご相談ください。
多機能温度校正器 ThermatorⅡ
1台で、オイルバス・均熱ブロック・表面温度・黒体炉の4通りの温度校正に対応。